本文
子供は大人のしぐさやもの言いを実によく見ている。三つにもなれば如何にも生意気で反論などをするものだが、「そんな言い方をするもんじゃない」といったら負けだ。「あら、あなたの言い方とそっくりよ」と横からチクリと揶揄されるのがオチだから。
全く子供は物真似の名人なのである。アイドル歌手からくまのプーさんの喋り方まで、見境なく貪欲にコピーしてしまう。みんなと同じようにできることが嬉しくてたまらないのだ。
だが、子供の再現のありさまを少し注意深く観察していると、この性能の良い複写機の、本当の性能の良さが見えてくる。子供は模倣するとき、元のものを自由に変改する。切り捨て、足し、一人の子供の生きる全体のなかで、今全く新しく意味付けられた別のオリジナルなものが生成している。それは模倣モデルからの自由な逸脱があるからだ。私たちが子供をみて楽しむのも、その逸脱のほほえましさなのではないか。
(注1)如何(いか)にも:見るからに
(注2)揶揄(やゆ)される:からかわれる
(注3)見境(みさかい)なく:区別なく、何でも
問題
問 53「そんな言い方をするもんじゃない」と言ったら負けだとあるが、なぜか。
問 54子供の模倣について、筆者はどのように述べているか。